月を追いかけて

第一章 『僕はいったい・・・』

「 あなたは誰?」
「えっ」

気が付いたとき僕は、人の欲望やエゴが入り交じるスクランブル交差点に立ち尽くしていた。
日の光は空を紫色に染める。そして時は目まぐるしく過ぎていく。車は灰色の溜息を吐き、
クラクションにやり場のない気持ちを乗せている。
人々は目まぐるしく流れる時間の中を何かを求め、さまよい続ける。
そして鼓動は一段と激しく打ちつける。

-ドックン・ドックン・ドックン・ドックン-

何故なんだ。この街に一体何があると言うのだ。このモノクロに塗りつぶされたこの街に・・。
シグナルはすでに点滅している。秒読みはもう始まった。

-青・黒・青・黒- -ドクン・ドクン・ドクン・ドクン-

そしてシグナルが赤に変われば全てが終わる。

ツーー・・・赤に変われば・・・。

それまでに僕は辿り着かなければならない。こんな所に立ち尽くしている訳にはいかない。
残された時間は限られている。だから僕は歩き出す。
宛の無いまま、モノクロの街、ストライプの歩道を。
真っ赤な女は確かに言った。あなたは誰?と。
僕は一体誰なんだ。そして僕は一体何処に向かうと言うんだ。

僕はいったい・・・。