故郷(ふるさと)


僕の生まれ育った街には 綺麗な小川とか無くて
ヘドロとコレラの混ざった川での川遊びが普通でして

僕の生まれ育った街には おいしい空気も 素敵な夜空も無くて
排気ガスとネオンに包まれている訳で

子供達に遊びの風景を見下ろす大きな木も自然も無くて
巨大なコンクリートのビルとアスファルトが当たり前で

緩やかな時の流れ等も無くて 喧騒と殺伐とが入り混じった流れで
振り向くどころか立ち止まる事すら許されずに
満員電車に押し込められて
刻まれたダイヤ通りに自分の気持ちとは関係なく動いていて

縁側でのんびりする事も場所も無くて
大地はおろか空すら日照権と言う権利ですら
求め奪い合っているような状態でして
マンション建設反対の立て札が当たり前にあって
人の溢れるスクランブル交差点の中
迷ってられるほどの余裕やゆとりすらなく

ただ毎日が目まぐるしく回っていて 昼も夜も無くて
当たり前のように 街が四六時中動き続けていて

今も昔も変らないモノなど何処にも無くて・・・

思い出の風景などはなんの温かみや温もり等無い
ただの人工的な建造物に塗り潰され

だけど人が溢れて居ても孤独を感じるそんな寂しいこの街だけど
僕には逃げ帰れる街(場所)など
幾ら探してもやっぱ他には何処にも無くて・・・

だって僕はこんな孤独なようなこの街で
仕方は無いけど生まれ育った訳だから・・・